HD300-29 苗穂車両所 (一般公開時に撮影)

 JR貨物は、貨物駅構内の入換作業に、国鉄から継承されたDE10形ディーゼル機関車を主として複数の機種を使用していましたが、経年は40年以上となり老朽化が著しく進行していました。そこで、これらの車両を置き換えるために、従来の方式に捕らわれず新たに開発された入換機関車がHD300である。開発に当たり近年の環境問題に対しての取り組みとして、排出ガスを削減する新しいシステムによる車両の導入が検討され、ハイブリッド方式が採用されました。
 HD300形機関車は、ディーゼル発電機を動力源とする電気式ディーゼル機関車と蓄電池(リチウムイオンバッテリー)を動力源とする蓄電池機関車の2つの要素を兼ね備えた、日本初のハイブリッド機関車です。ディーゼル発電機からの電力と蓄電池からの電力を協調させてモーターを制御する「シリーズ・ハイブリッド」方式と呼ばれるシステムであり、本機に搭載されたディーゼルエンジンは直接走行駆動力には使用されず、発電機を回転させる発電用として使用されます。また、動力協調システムによるエンジンの効率的な運転と回生ブレーキ作動時において、モーターから発生した電力を蓄電池に充電することにより、大幅なCO2の排出を削減しています。本ハイブリッドシステムの開発にあたっては国土交通省の鉄道技術開発費の補助を受けています。
 試作機901号機を用いた走行試験では、DE10形と比較して牽引走行試験では、燃料消費量36%、NOx排出量61%、騒音22dbの低減効果が得られました。また、留置時間を考慮した1日分の運用で評価すると、燃料消費量41%、NOx排出量64%の大幅な削減効果があることが確認されました。


電源・制御機器

 発電モジュールにあるディーゼル発電機のFDMF9Z形エンジンは、国土交通省の定める第3次排出ガス規制に適合したもので、騒音や有害排出ガス低減を図っています。このエンジンはカミンズ製の、50万台の製造実績がある既存の産業用水冷4ストローク・直列6気筒、出力325PS(242kW)、定格回転数1,600rpm、最高回転数1,800rpmの燃料電子制御方式のエンジンを転用したもので、出力270PS(197kW)で使用しています。エンジンに駆動される発電機は、1時間定格出力173kW/1600rpmのかご形三相誘導発電機で三相交流を出力します。ディーゼル発電機の起動・停止は自動的に行われており、力行時にはディーゼル発電機を起動させて主変換装置に給電しますが、制動時はディーゼル発電機での給電を停止します。
 蓄電モジュールにある蓄電池にはジーエス・ユアサコーポレーション製リチウムイオンバッテリーLIM30H-8A形(量産車)を搭載しています。電池構成は26個のモジュールを直列に繋いだものを3並列としており、公称電圧750V、電力容量は40-70kWhです。経年劣化しても寒冷地で起動できるだけの出力容量を確保しており、制動時での回生ブレーキによりモーターから発生する電力を充電して蓄電するほか、状況に応じてディーゼル発電機からの電力を主変換装置経由で充電することも可能です。また、バッテリーは複数のバンクで構成され、異常時はバンクを開放して走行継続可能となるような冗長性を持っています。尚、寒冷地形の500番台では蓄電池の容量が変更されています。
 主変換モジュールにある主変換装置は、IGBT素子を使用した電圧形PWMコンバータ1基+電圧形PWMインバータ1基で構成され、力行時にはディーゼル発電機と蓄電池から給電される電力を主変換装置を介してVVVFインバータ制御を行い主電動機を駆動します。また、エンジンが故障した場合でも、蓄電池から給電される電力のみで自走できるようになっています。
 主電動機には、全密閉自冷式構造のFMT101形永久磁石同期電動機(PMSM)を機関車として初採用し、自然冷却方式のため冷却用送風機は省略されています。VVVFインバータ制御では、誘導電動機が主流ですが、永久磁石同期電動機は誘導電動機よりも効率が高く、小型軽量化を図ることができます。本機では1時間定格出力80kW、最大定格出力125kWを発揮するFMT101を4基搭載して1時間定格で320kW、最大定格で500kWの出力としています。


北海道向け500番台

 2014年度には、寒冷地仕様である500番台が登場し、2014年11月に甲種輸送された501号機を皮切りに3両(501 - 503号機)が苗穂車両所に配置されて札幌貨物ターミナル駅で使用されています。蓄電池容量の変更と、台車形式は1位側がFDT102D形、2位側がFDT102E形となりました。降雪時の作業員の防寒対策の一環として、冬季にはデッキ前部に着脱可能な風防板が取り付けられます。他にも、入換作業時の降雪による制動力や粘着力の減少を補うために台車に設置されているセラミック噴射装置が、暖地仕様の0番台では8か所に対して、寒冷地仕様の500番台では2倍の16か所に増強されています。

 最近になって、本州型のHD300-29が新鶴見機関区から苗穂車両所へ転属しました。本州型の仕様のまま北海道で活躍するのか興味深いところです。




HD300-29 苗穂車両所 (一般公開時に撮影)



HD300-29 苗穂車両所 (一般公開時に撮影)



HD300-29 苗穂車両所 (一般公開時に撮影)



HD300-29 苗穂車両所 (一般公開時に撮影)






HD300形主要諸元

形式 HD300
運用者 JR貨物
(0,500,900番台)
製造所 東芝→東芝インフラシステムズ
製造年 2010年-
製造数
運用開始  試作機 2011年
量産機 2012年
最高運転速度 45 km/h(入換)
110 km/h(回送)
全長 14,300 mm
全幅 2,950 mm
全高 4,088 mm
運転整備重量 60.0 t
軸重 15.0 t
動力伝達式 電気式
台車   川崎重工業製
軸梁式ボルスタレス台車
試作機:FDT102(1エンド側)
    FDT102A(2エンド側)
量産機:FDT102B(1エンド側)
    FDT102C(2エンド側)
機関、機関出力  カミンズ製
FDMF9Z形
270PS
発電機 かご形三相誘導発電機
FDM302形
160kVA
主電動機 永久磁石同期電動機(PMSM) FMT101形
80 kW (1時間定格)
125 kW (最大定格)
4基搭載
出力 320 kW (1時間定格)
500 kW (最大定格) 
制御方式 2レベルPWMコンバータ
+2レベルVVVFインバータ制御
制御装置 東芝製 FMPU130A形主変換装置 1C1M制御×4 
制動装置  電気指令式自動空気ブレーキ
(回生ブレーキ併用)
留置ブレーキ
保安装置 ATS-SF





JR貨物HD300形 北海道配置表

会社 形式 番号
貨物 苗穂 HD300 0 29 1
苗穂 HD300 500 501 502 503 3
































HD300